社会人は学生と比べると忙しいです。一方で英語習得の緊急度は学生よりも高かったりします。
でも、効率的に学習すべき大人こそ最初に英文法を身に着けておく必要があります。
このページでは英語学習で文法を最初に取り組むべき理由と、おすすめの書籍を紹介しています。
社会人になってから英会話を勉強するためのポイントは以下のページにもまとめてあるので、是非参考にしてみてください。

英語学習に文法が必要な理由
英語の学習方法というのは人それぞれで、これが正解!というものはありません。ですので人によって、また置かれている環境や目指しているゴールによって文法が必要ではない人もいるかもしれません。
ただ、少なくとも過去の私のように日本人が30歳を超えてから英語に取り組む場合、英文法は必要です。
たまに「日本人が英語を話せないのは文法学習に依存してるからだ、英語を使うために文法学習は必要ない」という意見を聞きます。
これは半分は正しいです。というのも、文法学習をするだけでは英語を話せるわけではないからです。つまり文法学習に依存する”だけ”だと英語は話せるようにはならない。
ただ、半分は間違っています。というのも、文法知識を飛ばして英語を使い始めても、きちんとコミュニケーションを取れる英語を話せるわけではないからです。
私が考える理由をいくつかリストアップしてみます。
大人になってからネイティブのような”聞くだけ話すだけ学習”はできない
私たちが日本語を習得した時、英語で習うほどの細かい文法は学びません。ネイティブが英語を母国語として学んだ時も同じでしょう。それでも私たちは”聞くだけ、話すだけ”で母国語をマスターできました。
なぜでしょうか。
それは使っている脳部位の違いです。
私は脳科学のプロフェッショナルではないので多くは語れませんが、人間は幼少期に言語爆発期と呼ばれる期間があります(大学で心理学を専攻していた時のにわか知識です)。
この時期に信じられないほど大量の言葉を覚え、正しい使い方を習得していきます。文法を机にかじりついてガリガリ勉強せずとも周囲が使っている言葉から文法も習得していきます。
それもそのはずで、これはこの時期だけ使えるスーパー学習能力を使っているからです(能力というより、脳力かも)。
何のことかと言いますと、私たちが母国語を使う時と第二言語を使う時に活性化する脳の部位は異なります。
第二言語を使う場合は”まとまり”を認識する部位のブローカ野という部位が活性化します。これはどんなに流暢に英語を話す人でも変わらないそうです。一方で、母国語を話す時はこの部位は活性化せず、違う部位が活性化します。
これは、外国人で且つ大人になってしまった我々がネイティブと同じ学習方法はできない、ということを示唆しています。逆もまた然りで、大人になった外国人が我々と同じように日本語を習得していくことは不可能です。
外国人であっても幼少期に英語圏に渡り、シャワーの様に言葉に囲まれればわかりませんが、少なくとも私のようなover30が英語を学ぶ際は「聞くだけ・話すだけ」では正しく英語を使えるようにはならないでしょう。
文法を知らないと相手の話を理解できない
こちらの文法知識が不足していても相手がネイティブであればある程度は察してくれるかもしれません。
だた、逆の場合は相手が言っていることを私たちは理解できません。
日本語とは異なり、英語は単語の並びによって意味が大きく変わってきます。
- I give it to you.(それを君にあげます)
- I give you to it.(それに君をあげます)←実際こんな文章は使われませんが、例として。
では全く意味が変わります。
日本語の場合は「それ、あげるよ、君に」も、「君、それあげる」も、「それあげるわ」も同じ意味で通じますが、英語の場合は並びが少し変わると明確に意味が変わります。
「いや~それくらい空気でわかるよ」と思わないでください。実際の英会話では文法こそシンプルなものの、一つ一つのパートが長くなってきます。また、それを瞬時に判断していかないと会話についていけません。
わかったつもりでなんとなく話していたけど、実は相手の言っていたことは全然違うことだった、というのは英会話ではよく起こります。
それを避けるために最低限の英文法は身に着けておく必要があります。
早くてめちゃくちゃよりもゆっくりと正確に話せる方が評価される
レベルの低い話で申し訳ないですが、私が昔同僚と外国人相手の打ち合わせに行った時の話をさせてください。
同僚はそれこそ雰囲気で押し切ってきたタイプ。幼少期から家族で海外を頻繁に訪れており、英語の雰囲気には慣れていました。ただ、文法知識は貧困でした。
一方で私は海外旅行も数えるほど。さらに外国人とまともに話したことも無い人間でした。
英語スクールで鍛えなおされた後でしたので文法はある程度身に着けていたものの場数が足りていない状況。当時は会話もゆっくりとしか話せませんでした。
ところが、実際の打ち合わせとなると、スタート初期こそ外国人たちは同僚の方を見るものの、最終的には私にのみ注意を払うようになりました。
ゆっくりとでも正確に意図を伝えようとする私の態度と文法が評価されたのだと思います。
英語というのはコミュニケーションのためのツールであり、ファッションではありません。お互いの言いたいことを正確に伝え合うために英語は存在しています。
どれだけ早いスピードで軽やかな発音で話せたところで、言いたいことをきちんと言えないと無意味です。
非ネイティブにはBroken Englishは通じない
前出の理由で少し触れましたが、相手がネイティブであれば、こちらの英文法が多少めちゃくちゃでも意図を察してくれます。
これは、我々が日本語文法が多少めちゃくちゃな外国人と日本語で会話をしたとしてもある程度理解できるのと同じです。ネイティブの豊富なスキルと気持ちの余裕で不足部分を補ってあげられるのです。
しかし、相手が非ネイティブだと状況は変わります。
いかに相手の英語が流暢だとしても第二言語です。こちらの至らぬ部分の行間を察して埋める余裕はありません。
また、非ネイティブと話す場合相手の英語が必ずしも流暢だとは限りません。相手の英語がかなり怪しい場合もあります。そういう時はこちらがある程度降りて、しっかりとしたわかりやすい英語で伝える、などの努力が必要です。
インターネットやLCCの普及もあり、世界はますますグローバル化していきます。これはもう止められません。そして引き続き英語は世界共通語のポジションにあります。
そうなると「ネイティブ」よりも「英語を話す非ネイティブ」が増えていきます(現時点で非ネイティブの方が多いでしょう)。
非ネイティブ同士の会話だと「文法に則った正しい解釈」でコミュニケーションしなければなりません。
一見非ネイティブだからこそBroken Englishで通じそうなものですが、非ネイティブ相手だからこそ正しい英文法が必要です。
おすすめの参考書
文法の学習となると、心苦しいのですが「文法書」を元に一つずつ勉強していくしかありません。さらに、一回で終わるものでもなく、英語を使っていく限りは何度も振り返って定着させます。
そのために良質な参考書を保持しておくのは有効です。いくつか推薦させていただきます。
高校自由自在
私が推薦するのは「自由自在中学英語」という文法書です。
![]() | 自由自在中学英語〔平成28年新装 基礎から入試まで [ 織田稔 ] 価格:3,025円 |
私が通った日本人講師による英会話スクールでも推薦されていた図書です。内容の網羅性が高く説明も深くて丁寧。
問題集も豊富なので、学習した後の理解度チェックもしっかりとできます。
一つ難点があるとすれば装丁が古臭く、印刷も二色刷なので「見た目にやる気が出ない」という点でしょう。デザインはかなり古いです。
ただ、これは文法書。文法学習は筋トレのようなもので自らのやる気を高めて取り組むしかありません。
一度に全部覚えようとするのではなく、まずはざっと取り組んでみて、その後に何度か重ねて勉強するのがおすすめです。
ロイヤル英文法
中学自由自在が少し易しいと感じた場合は、ロイヤル英文法という文法書を手に取ってみると良いでしょう。
![]() | 価格:1,980円 |
ロイヤル英文法はかなり分厚いですが、一つ一つの文法をイメージから理論までしっかりと教えてくれる良書です。
辞書的な使い方が非常にしやすい作りになっており、英語が上達した後も一生使えます。海外移住をした今でも私の手元に置いてある本です。
使い方のコツ
いずれの文法書を使う場合もポイントとなる使い方は共通です。
- 期限を切る
- 考えすぎず、声に出して覚える
- 問題集は本気で取り組む
1つずつ補足します。
期限を切る
まずは「期限を切る」ということです。
例えば、私が英会話学校で高校自由自在を勧められた際は「いつまでに終わらせますか?」という質問から始まりました。
「3ヵ月」と区切った場合は一週間ごとに分割し学習計画(進捗計画)を作ります。
ある程度理解が進んでくると別ですが、基本的に英文法の学習はよっぽどの語学マニアでも無い限りは苦しいものです。
期限を切り、一気に終わらせる!という勢いが無ければまず通して読解することはできません。
考えすぎず、声に出して覚える
英文法が苦手、という人からよく聞くのは「なんでこうなるかわからない」という声です。
それもそのはずで、英語と日本語は全く異なる言語。音から構造、さらには生み出した民族のキャラクターまで非常に異なります。
英語は確かにルールが明快で論理的な言語ではありますが、それでも論理的にすべてを理解していくのは言語学者でもない限り難しいでしょう。
あまり深く考えすぎずに「こういうものだ」と割り切って覚えていく方が習得しやすいです。
また、その際には見本として出てくる構文を実際に声に出すのが効果的です。声に出すことで、「目」、「耳」、「口」の3つの感覚器から覚えることが可能です。
できれば見本として出てくる構文は覚える勢いで取り組んでください。
暗記した構文をそのまま会話に使うことはありませんが、英会話の初期ステージでは頭の中で構文を思い出しながら文章を頭で組み立てる作業も発生します。
構文を入れ替えて話すことを繰り返すうちにパターンが脳みそに染み付き、考えなくても「スッ」と言葉が出てくるようになります。
そのためには「構文の引き出し」が必要で、文法書に出てくる構文はシンプルで使いやすいものが多かったりします。
問題集は本気で取り組む
紹介した文法書には知識の定着をチェックするための問題が付いています。この問題集に本気で取り組むことも大切です。
問題集の存在意義は「わからない部分を明確にすること」です。まずは文法解説を読んで「インプット」、その後問題集で「チェック」して、再度「復習」をします。
そのためにおすすめなのは「問題部分を拡大印刷して使う」ことです。
参考書自体と切り離すことで「途中でわからないから学習パートをついつい見てしまう」ことができなくなります。つまり、問題本来の存在意義である「チェック」に集中できます。
また、別紙で印刷したことで復習時にガンガン書き込むこともできます。参考書のままだと書き込むのが嫌だという方もいますが、書くというのも記憶の定着には役立ちます。
まとめ
学生の時は文法の学習なんて大嫌い!役に立たないよ!と高をくくっていましたが、実際大人になって英語を使うようになった今は「文法ほど大切なものはない」と感じています。
どんなに単語を覚えても発音が良くても、文法が伴っていないと正確なコミュニケーションは取れません。腹をくくって取り組む必要はありますが、必ず役に立つということを信じて頑張りましょう!